処分の道は5つ
相続した空き家を手放す道は、大きく分けて、売る、解体して土地にする、国に引き取ってもらう、空き家バンクに出して使ってくれる人を探す、相続そのものを放棄する、の5つです。貸す・このまま持つという選択もありますが、ここでは「手放す」に絞ります。
どれか一つに決める前に、それぞれの期限と、使えない条件を先に確認します。期限を過ぎると使えなくなるものがあり、順番を間違えると補助が受けられないものもあるからです。
売る:3,000万円の特別控除が使えるか
相続した空き家を売ると、条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。対象は1981年5月31日以前に建築された家屋で、相続の直前に亡くなった方がその家に一人で住んでいたこと、売却代金が1億円以下であることなどが要件です。
期限は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。特例そのものの適用期限は2027年12月31日で、早いほうが実際の期限になります。
- 確定申告には、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要
- 2024年1月1日以降の譲渡で、相続人が3人以上いる場合は、1人あたりの控除額が2,000万円になる
- 相続後に、事業・貸付け・居住に使うと対象外
解体して土地にする:補助は「着工前」
空き家ナビが2026年9月時点で一次情報を確認した135市区町村のうち、解体の補助があるのは94市区町村・96制度でした。上限額は5万円から200万円まで開きがあり、中央値は50万円です。
ほとんどの制度は、着工前の申請が条件です。先に壊すと対象外になります。また、多くの制度は、市の事前確認で危険と判断された建物に限られています。
解体すると住宅用地の特例が外れ、翌年度から土地の固定資産税が上がります。売るまでの期間が長くなりそうなときは、この負担も見込んでおきます。
国に引き取ってもらう:相続土地国庫帰属制度
2023年4月27日に始まった相続土地国庫帰属制度では、相続した土地を国に引き取ってもらうことができます。制度の開始前に相続した土地も対象です。
ただし、建物がある土地は申請できません。空き家の場合は、先に解体して更地にする必要があります。審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、承認されると10年分の管理費用に相当する負担金(基本20万円)を納めます。
- 担保権や使用収益権が設定されている土地、土壌汚染がある土地、境界が明らかでない土地は申請できない
- 共有地は、共有者全員で共同して申請する
空き家バンクに出す
空き家ナビが確認した135市区町村のうち、空き家バンクがあるのは71市区町村でした。市区町村が情報を掲載し、実際の売買や賃貸の仲介は不動産会社が行うことが多い仕組みです。
価格は所有者が決めます。ただし、掲載しても買い手が見つかる保証はありません。空き家バンクへの登録を条件にした補助制度もあるため、補助を使う予定があるなら、登録と申請と工事の順番を窓口で確認しておきます。
無償で譲る場合の税金の扱いは、譲る側と受け取る側で違います。具体的な税額は、税務署か税理士にご確認ください。
相続放棄:家だけを放棄することはできない
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述して行います。放棄すると、預貯金などのプラスの財産も引き継げません。
2023年4月1日施行の改正民法940条により、放棄の時にその家を現に占有している場合は、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産と同一の注意で保存する義務が残ります。
決めずに置いておくと
空き家になっただけで固定資産税が上がるわけではありません。上がるのは、市区町村から「勧告」を受けたときです。勧告を受けると住宅用地の特例が外れ、200㎡以下の部分の固定資産税の課税標準は6倍になります。
措置は、助言・指導、勧告、命令、行政代執行の順に進みます。命令に従わないと50万円以下の過料の対象になり、行政代執行で解体された場合、その費用は所有者の負担です。
家財の片づけにも補助がある市区町村があります。空き家ナビが確認した135市区町村のうち、家財の処分に補助があるのは39市区町村・39制度でした。家財を出す前に、相続人全員の同意を取っておきます。